2025/02/26

第1回 我、何ヲ以テ此ノブログヲ始メシ乎

 2025年2月のある日、私は日本語教育で、今、AIがどのように使われているか知りたいと思い、「日本語教育 AI」という言葉でインターネットを検索してみました。すると、驚いたことに、日本語教育のシンポジウムや日本語教育の研究のファイルなどばかりが出てきて、具体的なAIの使い方を書いたサイトがまったく出てきませんでした。

 インターネットで、日本語教育の文型の教え方、教案の書き方、導入に使うイラストなどについて検索すれば、多くのサイトがそれらについて紹介しています。しかし、AIについて書かれたサイトは、その時、まったくと言っていいほど、見当たりませんでした。

 2022年12月に生成AIのChatGPTが公表されてから、あれほど世の中でAIが話題になり、英語教育界でも実践例が蓄積されつつあるのに、日本語教育のAIの実践例がほんどんインターネット上で見つけられないとは、私は予想だにできませんでした。

 私は国立大学で教員をしていて、普段、見よう見まねで、AIを使っています。日本語の授業では、例文を作らせたり、作文の添削をさせたり、学生の会話の相手させるなど、様々な場面でAIを使っています。また、海外の大学の先生に仕事のメールを書くとき、学生の推薦状を書くとき、国際交流行事のパンフレットを作るときなど、大学の業務にもAIを使っています。

 私は、まったくの文系の人間で、AIを支える数学的しくみやプログラミングについて詳しいわけではありません。それでも、AIが日本語教育や大学の業務に非常に役に立つということを感じています。2025年2月現在、日本語教育でAIについて紹介しているサイトがないのなら、私が普段していることを紹介することが、もしかしたら、人の役に立つのではないか、私はそう思い、このブログを始めることにしました。

 AIについて、私もまだまだわからないところが多いのですが、このブログをお読みいただいて、日本語教育でどのようにAIを使うことができるのか、みなさんとご一緒に考えていければと思っています。


2025/02/25

第3回 文章から語彙リストを作ろう

今日のプロンプト 

次の文章の語彙リストを作ってください。最初に単語を書き、次にその単語の読み方を書き、最後にその単語のベトナム語訳を書いてください。ただし、日本語の初級レベルの簡単な単語は語彙リストに入れる必要はありません。   

 

 私はその人を常に先生と呼んでいた。だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。これは世間を憚ばかる遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。私はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ「先生」といいたくなる。筆を執っても心持は同じ事である。よそよそしい頭文字などはとても使う気にならない。 


夏目漱石『こころ』の冒頭部分から引用 



AIの回答 

(2025年2月25日にChatGPT 4oにより生成) 

語彙リスト 

  1. 常に(つねに)- Luôn luôn 

  1. 本名(ほんみょう)- Tên thật 

  1. 打ち明ける(うちあける)- Tiết lộ, bày tỏ 

  1. 世間(せけん)- Xã hội, thế gian 

  1. 憚る(はばかる)- Ngại, dè dặt 

  1. 遠慮(えんりょ)- Khách sáo, giữ kẽ 

  1. 自然(しぜん)- Tự nhiên 

  1. 記憶(きおく)- Ký ức, trí nhớ 

  1. 呼び起こす(よびおこす)- Gợi nhớ, khơi gợi 

  1. (ふで)- Bút lông 

  1. 執る(とる)- Cầm, nắm, đảm nhiệm 

  1. 心持(こころもち)- Cảm giác, tâm trạng 

  1. よそよそしい - Xa cách, khách sáo 

  1. 頭文字(かしらもじ)- Chữ cái đầu 



AIにできること 

 読解の授業で、小説やエッセイあるいは新聞記事など生教材として学生に読ませようとすると、文章中に学生の未習語がたくさん出てくる場合があります。未習語について、読み方学生の母語に合わせた翻訳が書かれた資料を作ることができればよいのですが、未習語が多ければ、その作業はかなり手間かかると思いますまた、学習者の母語の辞書を使い慣れていなければ、正しい翻訳を見つけるのも大変でしょう 

 こんな時は、AIを使って、一挙に語彙リストを作ってしまいましょう。今日のプロンプトの後に、文章をコピーして貼り付ければ、翻訳付きの語彙リストを簡単に作ることができます。 


人間にできること

 ただし、やはりAIが生成したものをそのまま学生に渡すのは賛成できません。必ず教師がそれを確認、修正する必要があると思います。  今回の場合は、中上級以上の学生が対象であることを想定していますから、「遠慮」や「自然」といった語は、既習語である可能性が高いので、語彙リストから省いてもよいでしょう。また、「筆を執る」という慣用句が今回の語彙リストでは「筆」と「執る」に分けられてしまっています。「筆」を「執る」だけだと「筆を持つ」という意味にしかなりませんから、「筆を執る」という項目を作り、ベトナム語訳を調べて、語彙リストに入れる必要があるでしょう。 

 なお、初級から中級の学生のために、特定の文章から語彙リストを作る場合は、今回のプロンプトの「ただし、日本語の初級レベルの簡単な単語は語彙リストに入れる必要はありません。」という部分を外してください。「人」「同じ」といった初級レベルの単語も語彙リストに含まれるようになります。 

 

ここに注意! 

 AIに何かを翻訳させたときは、翻訳が正しいかどうか一応確認をしたほうがよいと思います。私の経験上ですが、AIは、まだときどき翻訳を間違ってしまうことがあります。英語と日本語の間の翻訳はほぼ間違いがないのですが、日本語とアジアの言語の間だと、翻訳がおかしくなるときがありますAIが学習した言語の量は英語が一番多く、それに比べると、他の言語の学習量が少ないからです。

 今回はベトナム語の翻訳を語彙リストに付けましたが、そのベトナム語訳が正しいかどうかを確認しておきまょう。私の場合、ChatGPTを使って、何かを翻訳させたときは、GeminiやGoogle翻訳など、ChatGPT以外のAIや翻訳サービスで、外国語訳を日本語に戻して、翻訳が正しいかどうか確認しています。元の日本語の単語と違う日本語訳が出てくれば、その翻訳が間違いであることがわかります。

2025/02/24

第2回 新出語を使った例文を作ろう

今日のプロンプト

「とりわけ」という言葉を使って、例文を10個作ってください。

 

AIの回答

 (2025年2月24日にGemini 2.0 flashで生成)

1.この店は、パンの種類が豊富だが、とりわけクロワッサンが美味しい。

2.彼は、多くの趣味を持っているが、とりわけ音楽鑑賞が好きだ。

3.この会社は、福利厚生が充実しているが、とりわけ住宅手当が手厚い。

4.私は、猫が好きだが、とりわけシャム猫が好きだ。

5.この映画は、アクションシーンが見どころだが、とりわけカーチェイスのシーンが素晴らしい。

6.彼女は、ダンスが得意だが、とりわけバレエが得意だ。

7.このホテルは、ロケーションが良いが、とりわけオーシャンビューの部屋が人気だ。

8.彼は、様々な楽器を演奏できるが、とりわけギターが上手い。

9.この小説は、登場人物が魅力的だが、とりわけ主人公のキャラクターが素晴らしい。

10.この国は、歴史的な建造物が多いが、とりわけ城跡が有名だ。

 

AIにできること

 日本語教育では、新しい単語を導入する際に例文を学生に示す場合がよくあります。そして、学生の理解を深めるためには、できれば例文が複数あったほうがよいでしょう。しかし、辞書を調べても、例文は一つしか載っていなことが多いですし、自分で例文をたくさん考えるのはなかなか大変なことです。

 こんな時は、AIに例文を作らせてみましょう。AIなら、例文を10個でも20個でも瞬時に作ってくれます。AIにたくさん例文を考えてもらって、その中から授業で使えそうなものを選んで、学生に示すことができれば、授業の準備はずっと楽になるはずです。


人間にできること

では、AIに作らせた例文の中からどのようにして例文を選んでいけばよいでしょうか。今回は「とりわけ」という語の例文をAIに作らせましたが、「とりわけ」は日本語能力試験ならN1レベル程度の語ですので、中上級以上の学生に「とりわけ」という語を教えている状況を考えてみましょう。

学生が中上級の学生であるなら、例文の1や6や8なら、そのまま提示しても、おそらく理解できるでしょう。ですが、例文の4や10でしたら、「シャム猫」や「城跡」を、「子猫」や「お城」といった言葉に代えたほうがわかりやすくなるでしょうし、例文の3は、「福利厚生」「住宅手当」「手厚い」といった語が難しすぎると思いますので、例文としては使いにくいと思います。

いずれにせよ、AIに例文を作らせる時は、学生のレベルに合わせて、教師が例文を選択したり、修正したりすることが大切になってくると思います。

 

ここに注意!

「とりわけ」は「取り分け」と表記する場合もありますが、「取り分け」で例文を作らせたら、次のような例文が出てきてしまいました。

1. パーティーで、料理を取り分け、みんなで楽しく食事をした。

2. 母は、夕食の準備を手伝い、私にサラダを取り分けた。・・・

単語の例文をAIに作らせると、このようなことがときどき起こります。AIが言葉の意味を誤解してしまう場合もあるので、少しプロンプトを工夫してみましょう。例えば、プロンプトを『「取り分け」という副詞を使って・・・』『副詞「取り分け」を使って、・・・』などのように修正すれば、次のように、正しい例文を得ることができます。

1. この店は、ケーキの種類が豊富だが、取り分けチョコレートケーキが人気だ。

2. 彼は、スポーツが好きで、色々な種目をこなすが、取り分けサッカーが得意だ。・・・


第10回 単語の選択問題を作ろう。

  今日のプロンプト 1 「修繕」という言葉を使って、穴埋め問題を作ってください。三つの選択肢の中から答えを選ぶ問題にしてください。 AIの回答1 (2025年3月29 日にClaude 3.7 Sonet により生成) 問題:台風で壊れた公民館の(   )工事が来週から始まる予...